- 重要文化財指定記念特別展
鈴木其一・夏秋渓流図屏風 - 2021年11月3日(水・祝)~12月19日(日)
休館日 | 毎週月曜日 |
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開館時間 | 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
入場料 |
オンライン日時指定予約 一般1500円 学生1200円 *障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料 |
会場 | 根津美術館 展示室1・2 |
鈴木其一(1796~1858)の筆になる「夏秋渓流図屏風」は、岩場を削る水流のある檜の林を確かな現実感をもって描いた画面に、異様な感覚を抱かせる描写が充満する作品です。
其一は、江戸の地で、一世紀前の京都で活躍した尾形光琳(1658~1716)を顕彰し、「江戸琳派」の祖となった酒井抱一(1761~1828)の高弟ですが、徹底した写実表現やシャープな造形感覚、ときに幻想的なイメージを加え、個性を発揮しました。そんな其一の画業の中心にあるのが、最大の異色作にして代表作でもある「夏秋渓流図屏風」です。2020年に、其一の作品としては初めて、重要文化財に指定されました。
本展では、抱一の影響や光琳学習はもとより、円山応挙や谷文晁、古い時代の狩野派など琳派以外の画風の摂取、そしてそれらを、自然の実感も踏まえつつ統合する其一の制作態度を検証して、本作品誕生の秘密を探ります。
主な展示作品のご紹介です。出品リスト(PDF)のダウンロードはこちらから。
- 夏秋渓流図屏風
- 鈴木其一筆
- 日本・江戸時代 19世紀 根津美術館蔵
- 渓流が流れる檜の林。右隻は山百合の咲く夏の景、左隻は桜の葉が赤く染まる秋の景。一見、写実的な画面だが、粘度を感じさせる渓流をはじめ、奇妙な表現が溢れる。右隻中程の檜に止まる蝉も、画面に静寂感を与えるばかりである。
- 夏秋草図屏風
- 酒井抱一筆
- 日本・江戸時代 19世紀 東京国立博物館蔵
- 驟雨に打たれる夏草と、野分に吹かれる秋草を描く銀屏風。写実性と抒情性が融とした、抱一の代表作である。本作品と「夏秋渓流図屏風」は、画趣を違えながら、夏と秋の設定はもとより、風に飛ばされる紅葉した葛と舞い落ちる桜紅葉など、共通点も少なくない。其一が師の作品を意識していたのは間違いない。【展示期間=12/7~12/19】
- 保津川図屏風
- 円山応挙筆
- 日本・江戸時代 寛政7年(1795) 株式会社千總蔵
- 円山応挙(1733~95)が、没する年に描いた生涯最後の大画面作品。奔流が一双屏風の左右と奥から中央に向けて流れくる構成が、「夏秋渓流図屏風」と共通する。応挙の写生画風の影響は抱一に及んだが、其一も応挙を崇敬した。
- 花木渓流図屏風
- 山本素軒筆
- 日本・江戸時代 17~18世紀 個人蔵
- 隆起する緑の地面に、画面枠でトリミングされた木々が林立する構図が「夏秋渓流図屏風」に酷似する。筆者の山本素軒(?~1706)は、尾形光琳が画技を学んだという説もある京都の狩野派の画家。其一は、旅した京都で素軒の作品を見たのはないだろうか。