
![2021/1/8[NEZUNET会員特別ページ]「きらきらでん」展WEBギャラリートーク](images/nezunet_20210108_title.gif)
螺鈿技術記録 片岡華江作 日本・昭和31年(1956) 東京国立博物館蔵
展覧会は、螺鈿がどのような工程を経てつくられるかを紹介する「1.螺鈿とは」から始まります。
手前から夜光貝、白蝶貝、鮑貝と並ぶ、真珠層をもつ貝が螺鈿の素材です。螺鈿技法は大きく「厚貝法」と「薄貝法」に分けることができます。無形文化財保存技術者(螺鈿)である片岡華江(1889-1966)の技術記録によって、その工程の一部をご紹介します。

平等院鳳凰堂天蓋螺鈿残欠 日本・平安時代 11世紀 個人蔵
次は「2.厚貝の螺鈿」。中国からもたらされた「厚貝法」が螺鈿技術の基本となった、日本の作品をご覧いただきます。
古くは、奈良時代の作例が正倉院宝物にありますが、本展で最初にご覧に入れるのは平安時代、平等院鳳凰堂の天蓋を飾っていた螺鈿。と言っても、時代を経て剥がれ落ちた貝の欠片ですが、欠片ゆえに、その厚みがとてもよくわかります。素材は夜光貝です。

重要文化財 桜螺鈿鞍 日本・鎌倉時代 13世紀 国(文化庁保管)
日本における厚貝螺鈿技術の頂点を示す作品。桜という日本的なモチーフを、線的表現と面的表現、精巧な貝の切り透かしによって、騎馬で用いる鞍に見事にえがきだしています。『平治物語』に「柳桜をすりたる貝鞍」と記される鞍は、このようなものだったかと想像されます。
中国における日本の螺鈿に対する高い評価も、うなずけます。

樹下人物螺鈿硯屏 中国・元~明時代 14~15世紀 根津美術館蔵
中国では、貝の真珠層の部分を薄く加工することが可能になるとともに、元時代には、さまざまな形に切った貝片を組み合わせた絵画的な表現が発達します。
「3.薄貝の螺鈿」からまず、ポスターでも使っている作品の部分拡大です。貝の色の多彩さがよくおわかりいただけると思います。根津美術館は、こうした中国の螺鈿作品の優品を数多く所蔵しています。

波麒麟螺鈿天目台および蓋 中国・明時代 15世紀 根津美術館蔵
高貴な人に茶を呈する際に用いる天目台。精細な螺鈿が、台の裏面にまで及んでいますが、その大きさにも驚かされます。
なお、青磁の茶碗も本作品に付属するもの。中国では白磁の茶碗が添っていたかと思われ、日本での取り合わせと見られます。

鳳凰巴紋螺鈿小椀 琉球・第二尚氏時代 16~17世紀 個人蔵
続いて「4.琉球の螺鈿」。琉球王国において祭祀に用いられた円形の食籠の内容品と思われる小椀です。蓋裏と高台内には「天」字が彫られており、王族が使用したと考えられます。
琉球には、王府の官営工廠的役割をもつ貝摺奉行所(かいすりぶぎょうしょ)がありました。

牡丹唐草螺鈿長箱 朝鮮・朝鮮時代 16~17世紀 東京国立博物館蔵
朝鮮半島では、高麗時代にすでに優れた螺鈿製品がつくられましたが、日本の螺鈿技術と意匠に大きな影響を及ぼしたのは朝鮮時代(李朝)の螺鈿。ご覧のような、牡丹唐草文の螺鈿器が朝鮮時代前期の典型です。高麗時代の螺鈿では唐草の茎は金属で表していましたが、この時代には細く切った貝をつないで表すようになります。

桜花螺鈿椀 日本・桃山時代 17世紀 個人蔵
鎌倉・明月院に、大名茶人である織田有楽が百人前を寄進したとされる椀類は、「明月椀」の呼称で知られます。平椀・壺椀、蓋付きの飯椀・汁椀の四椀揃で、桜花部分には、李朝螺鈿の特徴の一つである「割貝法」が用いられています。明月院に伝来するものには膳が添い、そこに表された牡丹唐草文も朝鮮螺鈿の影響が色濃く認められます。
前作とともに、「5.李朝螺鈿と日本」で紹介しています。

裂螺鈿小箪笥 日本・江戸時代 18~19世紀 根津美術館蔵 福島静子氏寄贈
「6.江戸の螺鈿は百花繚乱」には、タイトルどおり、蒔絵と組み合わされた伝統様式、鮑の厚貝を鉛板と共に大胆に用いる琳派様式、ヨーロッパの好みに応じたエキゾチックな趣の南蛮様式やカラフルな長崎漆器など、さまざまな螺鈿をご覧に入れますが、ここでは、精緻に切り出した貝や金の薄板を密に置き並べて文様を表す杣田(そまだ)細工をピックアップ。富山藩主の前田家に抱えられた螺鈿工・杣田家に伝えられた技法です。

梅蔦蒔絵螺鈿蓋 神坂祐吉作(図案:神坂雪佳) 日本・大正~昭和時代 20世紀 個人蔵
そして最後は、長い歴史を背景に近代の作家たちが螺鈿をどのようにその作品に生かしたのかをご覧いただく「7.いまも きらきらでん」。こちらは、琳派の近代の継承者と称される日本画家で図案家の神坂雪佳(1866-1942)と、その弟で漆芸家の神坂祐吉(1886-1938)によるコラボレーション。
螺鈿は過去のものではありません。現在もつくられ続けています。展示室を出た後は、ぜひ皆さんの目で、いまの螺鈿の表現を探してみてください。