「江戸→東京―駆け抜ける工芸―」より
2024/6/1

(右)板目釘図鐔
(左)蜻蛉図鐔
- 柴田是真作
- 日本・江戸時代
- 19世紀
まるで鉄製のように見える鐔ですが、実は漆工品。幕末明治を代表する蒔絵作家・柴田是真(1807~91)は、江戸中期の小川破笠が得意とした変塗(かわりぬり)を受け継ぎ、蒔絵の表現性をアップデートしました。

蕗蒔絵重箱・茗荷蒔絵重箱
- 柴田是真作
- 日本・明治時代
- 明治12年(1879)
- 根津美術館蔵
透明度の高い漆を塗り、漆絵でそれぞれ蕗(ふき)と茗荷(みょうが)を描いた祝い用の重箱。漆の濃淡だけであらわされた文様が、見る角度によってほのかに浮かび上がる、洒落た趣向の作品です。
是真の作品は一見地味ながら、卓越した技術が注がれています。その高い技巧により、明治政府の殖産興業推進の波に乗って国内外の博覧会で受賞を重ね、世界をも魅了することになります。

(右)東大寺伎楽面模造
(左)法隆寺伎楽面模造
- 加納鉄哉作
- 日本・明治時代
- 19世紀
- 根津美術館蔵
明治時代には、さまざまな分野で、伝統技術に裏打ちされた模写や模造が大きな役割を果たしました。蒔絵では小川松民が重要ですが、ここでは彫刻の加納鉄哉(1845~1925)に光を当てましょう。
鉄哉は、同じく彫刻家の竹内久一らと奈良の古彫刻の模刻・研究を進めるとともに系統的な古寺調査を行い、古美術の保存、ひいては近代的な日本美術史の成立にも寄与することになりました。これらの伎楽面の模造も、鉄哉の仕事を今に伝えます。

関羽図小柄
- 海野勝珉作
- 日本・明治時代
- 明治36年(1903)
- 根津美術館蔵
武士の世の終焉によりもっとも打撃を被ったのは装剣金工たちでした。そこに登場した救世主が刀装具のコレクター・光村利藻(1877~1955)。利藻は、金工家たちに製作機会を与えるとともに、伝統技術の存続を期しました。
海野勝珉(1844~1915)は幕末明治の金工界の巨匠・加納夏雄と並び称される明治の名工で、利藻が最も多く製作を委嘱しました。

烏鷺図鐔
- 香川勝廣作/原画:竹内栖鳳
- 日本・明治時代
- 明治37年(1904)
- 根津美術館蔵
香川勝廣(1853~1917)は、加納夏雄に彫金を学ぶとともに、画家でもあった柴田是真に絵画を学びました。この作品は、利藻と親交のある日本画家・竹内栖鳳の下絵による鐔。画家の筆さばきを、作品が湛える叙情性とともに鏨(のみ)で再現する技術の高さが見どころです。
