特別展「北宋書画精華」のご案内
2023/11/5

「山水・花鳥」
展覧会は5部構成。「山水・花鳥」のコーナーから始まります。北宋時代は、水墨画が完成するとともに、山水画や花鳥画が高みに達しました。
こちらは、大画面作品が並ぶケース。とくに右の(伝)董源「寒林重汀図」(兵庫・黒川古文研究所蔵)と中央の李成(款)「喬松平遠図」(三重・澄懐堂美術館蔵)は、江南と華北、広大な領土を有する中国の山水画の大きく二つの系統を代表する名品です。左は、北宋から南宋にかけて活躍した李唐の「山水図」(京都・高桐院蔵)。

「道釈・仏典」
次は「道釈・仏典」。日本に古来、伝わる北宋文物として重要な位置を占める仏画や写経の名品が並びます。北宋と同時代である平安時代の後半、彼の地に渡った日本の僧侶は、少なからぬ仏教関連作品を日本にもたらしました。

「李公麟」
そして「李公麟」のコーナー。「五馬図巻」と「孝経図巻」、2点の李公麟作品が奇蹟の邂逅を果たしています。

五馬図巻
- 重要美術品
- 李公麟
- 中国・北宋時代
- 11世紀
- 東京国立博物館蔵
「五馬図巻」は、その名のとおり、西域諸国から北宋に献じられた五頭の名馬を描く作品です。

五馬図巻
- 重要美術品
- 李公麟
- 中国・北宋時代
- 11世紀
- 東京国立博物館蔵
画の前には、清の乾隆帝の題を備えます。

五馬図巻
- 重要美術品
- 李公麟
- 中国・北宋時代
- 11世紀
- 東京国立博物館蔵
作品が所在不明の間、白黒の印刷物しかなかったこともあり、「五馬図巻」はモノクロームの作品と思われていましたが、実際は繊細な彩色がほどこされていることが、研究者を驚かせました。また、一部では線を引き重ねつつモデリングされた馬も人物もたいへんリアルで、このことも、それまでの李公麟のイメージを大きく覆すものでした。

五馬図巻
- 重要美術品
- 李公麟
- 中国・北宋時代
- 11世紀
- 東京国立博物館蔵
画の後には、李公麟と同時代の文人・黄庭堅の跋があります。文人たちに賞賛され、歴代皇帝に愛蔵された作品なのです。

孝経図巻
- 李公麟
- 日本・北宋時代
- 元豊8年(1085)頃
- アメリカ・メトロポリタン美術館蔵
一方、「孝経図巻」は、儒学の聖典のひとつである『孝経』の内容を章ごとに画に描き、続けて本文を書きます。全18章のうち3章を欠いています。

孝経図巻
- 李公麟
- 日本・北宋時代
- 元豊8年(1085)頃
- アメリカ・メトロポリタン美術館蔵
画は、総じてナイーブな墨線で描かれています。こうした画風(技法)を「白描画」といいます。李公麟は白描画を得意にしたとされてきており、それゆえに「五馬図巻」の再出現は、大きなニュースになったのです。
一方で「孝経図巻」は、線を主としつつも、山水や植物には墨の濃淡や点描風の描写も認められ、水墨山水画が大成された北宋時代にふさわしい清新な白描画風を示します。

孝経図巻
- 李公麟
- 日本・北宋時代
- 元豊8年(1085)頃
- アメリカ・メトロポリタン美術館蔵
末尾には明時代の文人画家で批評家の董其昌の跋があり、李公麟の真筆とされています。「五馬図巻」と異なり、「孝経図巻」はもっぱら民間に伝来しました。

畢世長像(睢陽五老図巻断簡)
- 中国・北宋時代
- 至和3年(1056)以前
- アメリカ・メトロポリタン美術館蔵
メトロポリタン美術館からもう一点、北宋時代の肖像画の名品が出品されています。
北宋前期の官僚で、引退後に「睢陽(すいよう)五老会」という文雅の交わりをもった5人を描く画巻を切断した一図。畢世長(ひつせいちょう)の顔貌は淡い墨線を引き重ね、一部には朱線も添え、さらに隈も併用しながら見えざる骨格、額の皺や鬚髭を表しています。迫真的な表現は、「五馬図巻」の示す写実性のベースになったと言えます。

「書蹟」「舶載唐紙」
展示は2階の展示室5に続きます。ここでは、「書蹟」と「舶載唐紙」をご覧いただきます。

(手前)行書王史二氏墓誌銘稿巻
- 黄庭堅
- 中国・北宋時代
- 11世紀
- 東京国立博物館蔵
まずは、北宋の文人たちの書の名品です。
なかでも、「五馬図巻」に跋を寄せる黄庭堅の名筆3点が並ぶ様子は壮観です。

古今和歌集序(巻子本)
- 国宝
- 日本・平安時代
- 11~12世紀
- 大倉集古館蔵
一方、「舶載唐紙」とはここでは、北宋で製作され、日本にもたらされた美麗な装飾料紙を指します。わが平安貴族たちは、雲母(きら)刷りや空(から)刷りで装飾された北宋製の紙=唐紙に、和歌や漢詩をしたためました。
近年、北宋の文人たちの書作品にも、技法的に似た紙が用いられていることが判明し、話題になっています。
