特別展「国宝・燕子花図屏風 光琳の生きた時代1658~1716」

2023/4/16

第1部

第1部 伝統画派の活躍

 本展も3部構成になりました。
 第1部は「伝統画派の活躍」。光琳が生まれた頃、やまと絵の土佐派や住吉派、そして狩野派がそれぞれ重要な画期を迎え、旺盛に活動していたのです。

土佐派と住吉派の作品

土佐派と住吉派の作品

  • すべて根津美術館蔵

 光琳が生まれたのは万治元年(1658)。折しもその4年前の承応3年(1654)、室町時代に始まるやまと絵の流派を継ぐ土佐光起が宮廷の絵所預に復帰します。また、4年後の寛文2年(1662)には、土佐派の門人であった如慶が新たに住吉派を創始することになります。
 右から、住吉派2代目の具慶「源氏物語図屏風(若菜上・下)」、光起「源氏物語朝顔図」、そして光起の子・光成「粟鶉図」が並びます。

神護寺経と経帙

両帝図屏風 
狩野探幽筆

  • 日本・江戸時代
  • 寛文元年(1661)
  • 根津美術館蔵

 やはり光琳が生まれてまもなく、幕府の御用を務めた狩野派の総帥・狩野探幽が描いた作品。時に探幽60歳、この年から落款に年齢を書き入れ始めました。将軍家や大名家で好まれた、古代中国の優れた皇帝の事績を主題としています。
 江戸時代、狩野派は絵画の教育機関の役割を果たしており、実は光琳も狩野派について基本的な画技を身に付けました。

第2部

第2部 光琳芸術の誕生

 光琳の生家は、後水尾天皇の中宮であった東福門院をはじめ高位の女性を顧客とする呉服商でした。30代半ばで画家を志した光琳は、そのツテによって、まず宮廷周辺に活躍の場を求めます。そして、そこで人気を得ていた草花図を学ぶとともに、着物に囲まれて培ったデザイン感覚をもって、44~5歳頃に描いたのが「燕子花図屏風」でした。

四季草花図屏風

四季草花図屏風 
喜多川相説筆

  • 日本・江戸時代
  • 17世紀
  • 根津美術館蔵

 17世紀末の宮廷で好まれていたのは、このような作品でした。墨を多用した瀟洒でかつ清新な魅力をたたえた草花図です。筆者の喜多川相説(生没年不詳)は、琳派の祖である宗達が主宰した工房・俵屋の3代目。光琳と同世代と考えられます。
 夕顔の垣根を斜めに配した右隻とモチーフを並列させた左隻、異なる構図の対照も「燕子花図屏風」に通じていますね。

燕子花図屏風

燕子花図屏風 
尾形光琳筆

  • 国宝
  • 日本・江戸時代
  • 18世紀
  • 根津美術館蔵

 総金地に濃淡の群青と緑青のみによって描きだされた燕子花の群生。燕子花をリズミカルに配置する意匠的構図が圧倒的ですが、花弁のふっくらとした表現も見逃せません。
 光琳は、宮廷で活動する一方、新たな顧客の獲得も目指しました。「燕子花図屏風」の魅力を高める上質な絵具、なかでも高価な群青をふんだんに用いて描けたのは、富裕な人物からの注文であったことの証です。

夏草図屏風

夏草図屏風 
尾形光琳筆

  • 日本・江戸時代
  • 18世紀
  • 根津美術館蔵

 こちらは、光琳晩年の作品。30種近い草花が、2曲1双の屏風を通じて対角線にそって描き出されています。左下に、燕子花がご覧になれるでしょうか。「燕子花図屏風」の花とはちがい、ほっそりしていますが、現実の燕子花に近いのはこちらです。
 装飾性に写生味が融合した様子は、次世代の円山応挙の登場を予見させます。

第3部

第3部 元禄美術の多面性

 第3部「元禄美術の多面性」では、光琳が「燕子花図屏風」をはじめとする華麗な草花図を描いていたのと同じ時期に生み出された、多彩な造形作品をご覧いただきます。

銹絵洞庭秋月図茶碗

銹絵洞庭秋月図茶碗 
尾形乾山作

  • 日本・江戸時代
  • 18世紀
  • 根津美術館蔵

 まず、光琳の弟で陶芸家の乾山の作品。乾山のやきものは絵画的な意匠を有するものが多くありますが、とくに銹絵の作品はまるで水墨画のようです。本格的なトレーニングを積んだ絵付け職人の参加が予想されます。その表現は、まもなく隆盛を迎える、文人画の先駆けともいえそうです。

大津絵貼交屏風

大津絵貼交屏風

  • 日本・江戸時代
  • 18世紀
  • 根津美術館蔵

 17世紀末から18世紀はじめてにかけては、大津絵が内容と形式を整えた時期でもあります。この作品は、まさにその頃に制作された大津絵12枚を屏風に貼り込んだもの。白木の縁の簡素な屏風は、庶民絵画である大津絵にふさわしいといえるでしょう。
 一足早く2019年にパリの日本文化会館で展示され、当館ではこのたび本格デビューの作品です。

伊勢参宮道中図屏風

伊勢参宮道中図屏風(部分)

  • 日本・江戸時代
  • 17~18世紀
  • 根津美術館蔵

 大津絵は、京都と大津を結ぶ街道沿いで制作・販売されました。
 その店先の様子。大津絵を描く職人、そして買い求めた大津絵を手に広げ持つ旅人の姿が見えます。

伊勢参宮道中図屏風

伊勢参宮道中図屏風

  • 日本・江戸時代
  • 17~18世紀
  • 根津美術館蔵

 上の大津絵の店先は、京都から伊勢神宮へのお参りの道中を描いた屏風の一場面。やはり、光琳が活躍した元禄年間に制作された作品です。光琳がお伊勢参りをしたなら、きっとこの屏風に描かれた名所や風俗を楽しんだはず。時代の息吹があふれています。